フースラーメソッドは魔法ではない

こんにちは!ボイストレーナーのKayokoです!!
少しずつボイトレに対する熱も戻りつつあるのでは?と感じられる昨今ですが、
色々お問い合わせをいただく中で、なんだかフースラーメソッド魔法のトレーニング方法のように捉えている方もいらっしゃるようなので、書いてみようと思います。

 

フースラーメソッドは魔法なんかでは全くありません!!

ぎゃッ!!だとしたら私にだけかからない魔法なの!?と訴えたいくらい(笑)

「フースラーメソッド」とググっているあなた、
「7種類の声を出すことで歌が劇的に上手くなる!」という印象を持っていませんか?

 

魔法というかさぁ…むしろ真逆…「死ぬほど地道」です_| ̄|○

地に足がベタベタとつきまくっております。
這いつくばるような、匍匐(ほふく)前進のようなメソッドだと私個人としては思っております。

確かに私の声はフースラーメソッドにより一番変化があったと感じています。
しかし他のメソッドを習い続けていたとして現在どうなっていたかとは比較することができないので、本当に自分に最良のトレーニング方法だったかは一生わかることはありえません。

なのでフースラーメソッドが至上のボイトレの方法であり、他の全ては間違っているなんて決して言いません。
その時の自分の喉に合っているトレーニングであれば、何メソッドでも正解です。

 

フースラーメソッド自体は古いものです。
フレデリック・フースラー(1889-1969)はスイスの声楽発声の教育者、発声研究者です。発声を生理解剖学的見地から明らかにした人です。
科学の進歩で言ったら現在の方が進んでいるのは明らかです。発声の解明も進んでいます。
それでも多くの、発声について考えたことのある人が一度は出会う「フースラーメソッド」とは一体どんなものなのでしょうか。

 

フースラーの功績は「喉を吊る筋肉(喉頭懸垂機構)」を発見したことにあります。
「喉」とは「喉頭」のことです。「声帯のお家」ですね。
この声帯のお家を支えている筋肉たちを7種類の声を出すことで鍛え上げ、中にある声帯が安心して活動できるよう、安定したお家(弾性的足場枠)を作り上げることを目的としています。

 

これだけ聞くと確かに「7種類の声を出すことができれば自由に歌えるのか!」と魔法のように聞こえるかもしれませんね。
たった7個のトレーニングで!?と勘違いしてしまうかもしれません。
ところがどっこいですね、この7種類をバシっと出し分けることがそもそもとんでもなく果てしない道のりです。

吊るされている器官である「喉頭」は動きます。

でも、手を挙げるように喉頭をスッと上へ、しゃがむように喉頭をスッと下へ動かすこと、それ自体がかなりハードルが高いのです。
フースラーが指している音色たり得るほどに喉頭懸垂機構が発達するには、とても時間がかかります。

フースラーを一度かじってやめた方も多いのではないでしょうか。
全然歌いやすくならないないじゃ〜んって。
多くの方がこの喉頭懸垂機構が復活するのを期待してじっくりと待つことができません。

 

フースラーメソッドは歌が上手くなるための方法ではない、と私は思っています。そのような狭い範疇を目的にしていません。
フースラーメソッドは「喉の潜在能力を呼び覚まし、本来持っている能力を再活性化させる」ものです。
その結果として自由に歌える、というイメージです。
これだけやっておけば歌が歌えるという即効性のある訓練方法というよりは、発声器官の機能がフルに活躍できるようになったので、自由に歌えるのです。

 

皆さんはこれまでの人生で、話すことと歌うことのどちらが長いですか?

歌っている時間の方が長いです!という人は稀でしょう。
現代人が上手く歌が歌えないのは当たり前なのです。歌うために使う筋肉を普段は使わなくても生活していけるからです。
この、日常生活ではほとんど使用しなくなってしまった声に関する機能を回復させることで声が自由になり、結果としてより良く歌が歌えるようになるということです。

 

私がフースラーメソッドを主に用いている理由の根源にはその考え方にあります。
武田梵声先生の著書にありますように、「地球上にあるすべてのボイステクニック、ボーカルテクニックを研究対象にし、文化的なジャンル以上に喉の自然力、自然法則と向き合う」ことを大切にしているからです。

(武田梵声先生の著書『フースラーメソード入門』はこちら)

どんな声が正しいとか、こういう歌い方が良いとか、好き嫌いで判断しない、
発声をその芸術的側面からではなく、機能の側面から研究された点に私は感銘を受けました。
ボイストレーニングとはそうあるべきだと私は思っています。

フースラーメソッドに出会う前の自分は、ただ西洋の歌手のように歌うことだけに固執しており、好き嫌いも激しく、ミックスボイスを求めていました。歌に対する想いは強いのに、特に変化はなく悶々としていました。

おそらく「声」というものの自然法則を完全に無視していたのでしょう。

 

超一流の歌手や俳優とあなたの喉の構造や機能はほぼ同じです。

では何が違うのか。
簡単です。機能が使えているか、神経が行き渡っているかくらいの差です。

私はサッカーができません。ほとんどやったことがないからです。サッカーをするために必要な動きを鍛錬したことがないからです。
また私は右利きです。左ではうまく文字を書いたり箸を持ったりできません。これもやってきていないからです。でも毎日練習したら左手でも文字を書けるようになると思いませんか?
やったことがない、使ってきていないからできない、発声もそんなもんです。

できないんだったらできるまでやればいい話です。
精神論を語るつもりはありませんが、トライした瞬間から見えないけれど体の中では変化は起こっていると私は思っています。

 

最後にもう一度、私は「フースラーメソッドが世界一だ!」とか、「これしかない!」と思っているわけでは決してありません。

どんなメソッドもボイストレーナーも、「生理的に正しい発声」を目指して声と向き合っているのは同じです。

ジャンルや文化、時代の流行などに偏ることなく、「声」そのもの自体を広く広く捉えているところがフースラーメソッドの良い点だと私は思っています。

 

この文章は、多くの方にとってつまらない話だったかもしれません。

でもどうしてもお伝えしたかったので書きました。

発声器官のみに着目し、そこに存在する事実のみで、他のどんな思考にも左右されていないからこそ「声」を育てることができます。

 

“子は親の鏡”だとよく言われます。

私は習いに来てくださる方々のある意味 ”親” です。

常に広い視野で中立的立場でいたいと考えています。

 

【 参考文献 】





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