アーティストのモノマネをすると歌は上手くなるのか?

こんにちは!ボイストレーナーのKayokoです!

さて、今日は、動画サイトなどでプロのアーティストさんが、
「どうやって歌うまくなったんですか?」という質問に、大抵の方が、
「モノマネ」と答えていらっしゃるのを受けて、アーティストさんの歌をマネすることのメリット・デメリットについて書いてみようと思います。

個人的に、誰かの歌のモノマネをすることは賛成です。
ただ、歌が上手くなるかはわかりません。歌の上手い下手の判断は個人の趣味でしかないので。
上手く使えば、ボイストレーニングの効果はあると思います。
その理由をいろいろ挙げていこうと思います。

 

 

1.モノマネをすることによって普段の使い方を変えるのは喉によい

他の人の歌をモノマネするのは、基本的には大賛成です。
モノマネをするということは、普段の自分の声(歌声)とは違う音色やニュアンスを出そうとするわけですから、
当然喉は普段と違う使い方になり、内外喉頭の筋肉たちのバランスも変わります。
この発声のバランスを変えるというのは声の成長にとても良いです。(とてつもなく変な使い方をしない限り)
誰にでも発声のクセというのは多かれ少なかれあり、よく動く筋肉もあれば眠っている筋肉もあります。
モノマネをすることで、いつもとは違う箇所を刺激することができ、ボイストレーニング効果があると思います。
よく行く見慣れた道を選ぶのではなく、違う道を行ってみることで発見・気づきがきっとあるはずです。

2.耳のトレーニングになる

もしかしたら聴いて一瞬でコピーできてしまう人もいるかも知れませんが、
大半の方が、アーティストさんの歌い方や声質をマネしようと思ったら、
繰り返し繰り返し何度も聴くと思います。

この「聴く」という作業はボイトレにおいてとてつもなく大事だと何度も書いてきましたが、
私たちは頭の中にない音は出すことができませんので、マネしようと思ったら、
脳に焼きつくほど繰り返し聴いては発声し、聴いては発声し、自分の声と本人はどう違うのか吟味する過程が必要です。
”何かが違う”と気づくことや、”どうやったら本人の歌唱に寄せられるのか”考えることはとても耳と喉を鍛えてくれます。

声という音に集中することは、声にはさまざまな状態があることを知り、声の変化に敏感になることができ、とても耳のトレーニングになります。

 

3.喉と戯れる時間が長くなって良い

歌をマネするには同じ曲、同じ箇所を何度も聴くでしょう。
必然的に歌に触れている時間、つまり発声している時間が長くなり、そして感覚を定着させるための反復練習も声のトレーニングには有効的でしょう。
声は、声を出すことでしか成長しませんから、喉を刺激する時間が長ければ長いほど、声の成長に良い効果も現れる可能性は高くなります。

 

4.自分で試行錯誤する時間はとても有益

モノマネを習得するには時間がかかると思いますし、
なんか違うな、こうかな?こんな感じで出すとどうかな?と脳をフル回転させて試行錯誤を重ねていく作業でしょう。
そういう風に、一人であーでもないこーでもないと喉と戯れ吟味する時間はとっても有益です。
人に習ってショートカットするのも効率が良くていいのですが、自分でトライ&エラーを重ねていってこそ得られるものもあります。

 

5.特定の人、特定のジャンルばかりやらないように✖️

よく生徒様でも好きなアーティストに声や歌い方が似ている方がいらっしゃいます。
たくさん聞けば聞くほど意識せずとも似てきてしまうことはよくありますよね。
歌い方とか声、パフォーマンス、カッコいいな〜、
あんな風に歌えたらいいなって憧れますよね。
そういう意識からだんだんそういう声が出るようになっていきます。

上でも言った通り、歌をマネすることはとても良いと思います。
ただ、特定の人や特定のジャンルばかりやってしまうのはNGです。
なぜならそれは、発声の自由さからはほど遠くなり、クセや固着を作ってしまうからです。
好きなアーティスト風な歌い方をすることは全然間違っていませんが、
どの曲を歌ってもマネしたアーティスト感が抜けないとなるとそれは問題ありです。
だってその発声状態以外できなくなってしまっているわけですから。
B’zが好きな人は全部B’z、サザンの桑田さんが好きな人はどれも桑田さん風、と言った具合になってしまうのは完全に声の自由を失っています。

解決策は簡単です。
さまざまな人をマネることです。できたらジャンルだって越えてほしいです。
モノマネを推奨しているプロの方も、この人だけマネしてましたなんて言っている人は一人もいません。
いろんな気になる歌手のモノマネをして上手くなっていっています。
好きな人だけではなく、幅広くやることによって、声の可能性も広がっていきます。

 

6.そもそもモノマネできる人は結構喉の状態は良い

モノマネって実際、みなさんどうですか?できますか?
そう簡単ではないですよね。
音色を似せること、ニュアンスを似せること、これらを自分で考えてやってみて似せられる人は、
そもそも結構いろんな筋肉がコントロールできているはずです。
声帯の厚みだったり、共鳴腔の操作だったり、意識して自分で変えられるわけですから、
かつ状態を変えても音程が取れているのだとしたら、最初から発声の状態は比較的良いと言えると思います。
じゃあできない人はやってはいけないのか?
いえ、全然そんなことはありません。どんどんいろんな人のモノマネをやってみてほしいです。
上でも言った通り、発声の筋肉バランスを変えるのは良いことですから、上手く似せられなくてもやっている過程に価値はとてもあります。
ただ、自分の普段の発声状況を変えて似せられるほど喉を上手く取り扱える人もそう多くはないのではないのでしょうか。

 

7.歌の魅力、声の魅力に気づける

みなさんが聴いている世に出ている歌手の方々は、人の心に何かを与えるから人前で歌う人に選ばれたと思います。
だとしたら、そういう人をマネることによって、いわゆる”いい歌”、”いい表現”というのはどういうものなのか知れるかもしれません。
もちろん音楽や声に良い悪いは存在しませんので、こういうことに言及するのは得意ではありませんが、
少なくとも日本の、世界の多くの人が注目しているアーティストさんというのは、その歌声に”何か”があるはずです。
うまいと言われる人、人気があるというのには理由があるはずだから、その人たちの歌を参考にするのは勉強になると思います。
何が人の心を動かしているのかわかるかもしれませんね。

 

8.まとめ:引き出しを増やすためにやる

歌のモノマネはどんどんやってみてください。
自分の普段の喉の使い方を離れられるので、声を訓練する方法として良いと思います。
ただ大切なのは、「この人が好きだからこの人ばかりやりたい」ではなく、選り好みせず良くも悪くも気になる人は幅広くやることです。
モノマネは発声の引き出しを、歌唱の引き出しを増やすためにやるものです。
いろんなアーティストを参考にすることで、最終的に自分のオリジナルを見つけるためでもあるかもしれません。
何か一つにこだわって、クセや固着を生ませるためにやるものではありません。
一旦染み付いてしまったクセというものは、ボイトレをしてもなかなか解きほぐすことは困難になってきます。
時が経過すればするほどさらに固着は強固なものとなり、それが発声の足枷になりかねません。
好きなアーティスト的な歌い方、発声を捨てろと言っているわけではあリません。勝手にある発声の状態がいつも発動してしまうほど念入りにやらないでね、ということです。
あんな声も、こんな声も出せた方が声が自由であることは一目瞭然ですよね。

ただ、最後に申し上げたいことは、
「歌う」というのは発声の最終形態みたいなレベルの高い行為であり、誰かの歌をマネることは植物に例えたら、綺麗に咲いた花だけを摘みとるようなものです。
摘み取った誰かが咲かせた花を自分の木にくっつけても、それは違和感でしかないでしょう。
「自分の声という木」を自分で育てて、自分だけの花を咲かせたくありませんか?
そもそも、喉という楽器は人それぞれ、世界でたった一つの楽器なのですから、
みんな綺麗な花に目が行きがちですが、大事なのは目に見えない土の下、根っこです。
健康で強く綺麗な花を咲かせるには根っこが肝心です。
それは本当の意味でのボイストレーニングの中でしか培うことはできません。

ご興味ある方は、ぜひ体験レッスンへ来てくださいませ!!

 

 

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