“喉閉め”とは何なのか?

みなさん、こんにちは!!
千歳鳥山と新宿のボイストレーニング教室と言えばわたし、Kayokoです(*´∀`)♪

今日は、発声のよろしくない状況を表す言葉として聞く、

「喉閉め」「喉声」

について書いてみたいと思います。

「喉が閉まってるよ〜」「もっとリラックスして〜」

って一体なんなんでしょうね〜???(O_O)

 

1.可能性その①過緊張

「喉が閉まっているような声」が出ているときに言われがちなのが「過緊張」です。
過緊張ってどういうことなのでしょう?
‘筋肉の緊張が過剰‘ということで、筋肉の伸び縮みが柔軟にできなくなっている状態と言えば想像しやすいでしょうか。
みなさん、肩こりはありますか?同じ姿勢や動きが続くなどして、体の使い方に偏りが生じると、いろんなところに黄色信号が出てきますよね。
筋肉はデリケートさんで、動かさなすぎても動かしすぎても調子が悪くなります。
発声にも人それぞれ癖があります。右利き左利きみたいな感じで、動かしやすい筋肉もあればほとんど眠ったままの筋肉もあります。
身体とは不思議なもので、動きの鈍い筋肉がいると、その筋肉がやるべきお仕事を
「しゃーないなぁじゃあ俺がやるよ〜」とほんとはその役割じゃない筋肉が補填しようとしてきます。

歌うための筋肉などは顕著で、普通に話すくらいであればそんなに動かさなくてもよい、生きていく上でさほど困らない筋肉ちゃんたちが多いです。
活躍の機会がなくなった筋肉は動かなくなっていき、そして動かす必要がなければ脳もその動かし方を忘れていきます。
なのでいざ歌おうとすると、活発に動いてくるのは普段から使っている筋肉たちで、眠らされてしまった子たちは目覚めません。
目覚めないもんだから、今動く子たちで何とかするしかない状況になります。
本来の働き以外のことをやらなければいけない筋肉があると、身体にいつかガタがくるのは想像にかたくないですよね。
「過緊張」とは、やたら動きまくってキャパオーバーしてしまっている筋肉がいるということですね。

一体どこの筋肉が硬直しているのか、動きすぎなのか、目覚めていないのか、特定するのは難しいです。
なぜなぜ分析していったら、日頃どんな体の使い方をしているのかまで見ていかなければいかなかくなります。
体は年季が入っています。使い方に偏りがない人は少ないです。
ボイストレーニングは、四方八方から360度の視点であらゆることを予想しながら行う訓練です。
そういう意味で、あらゆる声を出しいろんな筋肉のバランスを知ることがトレーニングになるというのは理にかなっているのです。

自分で凝っているな〜突っ張るな〜痛いな〜と感じるところをマッサージすると一時的にはよくなります。
でもまたすぐ同じ症状が出ますよね。
私はそういう対処療法のようなボイトレは勧めていません。
過剰に動いているところの力を抜くというのは難しいです。それより働きの鈍い筋肉を積極的に動かしていくことを勧めます。

2.可能性その②喉頭の位置が高い

”喉閉め”と言われる状況で一番多い共通点が、
「喉頭が高い位置にある」ということだと思います。

音程の上昇とともに喉頭は上がる傾向があります。(理由は確定されていませんが、舌骨上筋群が声帯の伸展、つまり高音を出すために役に立っているのでは?という考えがあります)
そして、喉頭が上がると声帯は閉じる方向へ向かうという性質があります。
飲み込むときの動作をするとわかりますが、口の中のものを食道へ送り込むときに喉頭は上がり、
声門を閉じて間違って肺の方へ降りてこないようにします。

高い音を出したい→喉頭が上がる→声帯が寄る(閉じる)
この作用がどう“のど声”と関係してくるかと言いますと、
喉頭が上がることそれ自体は全く悪いことではないのですが、その状況で音程を操作しようとすると輪状甲状筋がかなり働いて声帯を柔軟に扱えないといけないのですが、
そこでうまく引き伸ばせないとなると、息をたくさん吹いて声帯の振動回数を上げて音高を稼がないといけなくなります。
そうなると、増えた息をなんとか声に変換しようと、ただでさえ声帯は閉じる方へ寄っているのに、さらに余分に力を加えてあらゆる筋肉を使ってその大量で速い息を受け止めようとします。
このような不必要に力を加えられた声帯はフリーズしやすくうまく振動できなくなります。
結果、不健康で不自然に聞こえる音色が出てきてしまいます。

3.可能性その③トレーナーの声へのただの印象

ブログでも何度も書いていますが、悪い声、悪い音色というものはこの世に存在しません。
どんな声・歌声も声帯の活動の一つのバリエーションにすぎず、それに○✖️をつけるのはおかしいです。
一人一人身体は異なるのですから、一つとして同じ音は存在しません。

「あなたは喉声だ」と言われたことがある方もいると思います。
声は喉で作られます。お腹ではありません。喉を使って出す音、つまり”喉声”に決まっているのです。
問題なのは、ただの聴覚上、その人(トレーナー)にとって不快に聞こえる声をまとめて「喉声」と言っている可能性があるということです。
ただトレーナーの音色に対する美的感覚を押し付けているだけですね。
なのでたとえ喉声だと悪いもののように言われたとしても、自分が納得できる音色であれば胸を張って出してほしいと私は思っています。
例えばデスボイス、あのサウンドはみなさんお好きですか?不快に思う人もいるのではないですか?
喉に悪そう〜って感じる人もいませんか?
でも本人は心地よく鳴らしているし、その音色に魅力を感じているのです。だからそれはそれで良いのです。

ただもし、筋肉の使い方として非効率的だな、無理しているなという場合があれば訂正させていただきます。
発声に関わる筋肉を目覚めさせ、柔軟に動けるように導くのがボイストレーナーの役割であり、
音色についてどうこういう資格はないのです。
なので、「喉声だよ」「喉が閉まってるよ」とか言われたら具体的に何を指しているのか突っ込んでみるといいですよ。

4.問題は声帯の柔軟さがないこと

上で書いた通り、喉頭位置が高い(ハイラリンクス)は喉閉めになりやすい状況ではあります。
でも以下の歌を聴いてみてください。

●オルティンドー
https://www.youtube.com/watch?v=1Vr-QiYDHJk
●インド音楽(ラタ・マンゲシュカール)
https://www.youtube.com/watch?v=TLcY1HvnMnU&t=12401s
●日本民謡(江差追分)
https://www.youtube.com/watch?v=KOYa2CRLIZA

これらは全て喉頭位置が高めだと想像されます。
でも苦しそうに聞こえますか?喉を閉めあげているように聞こえますか?
つまり、喉頭が上へあっても声帯がのびやかに活動することはできるのです。
(アンザッツで言えば1番と5番)

要するに、喉頭の位置が問題なのではなく、声帯が柔軟に活動できずうまく振動できていないことが喉閉めに聞こえる原因なのです。
喉頭が上がると生理現象と重なって声帯を閉じすぎになりがちなので手っ取り早くハイラリはNGと言われがちです。
でも喉頭位置が低くても不自然な発声状況はいくらでも起こります。
フースラーはこの声帯が健康的に活動できる舞台を作ることが大切だとして外喉頭の筋肉たちに着目したボイストレーナーです。

5.解決策は?

問題は声帯の柔軟性にあると言いましたが、
具体的に解決策を一つあげろと言われれば、
裏声を鍛えてください!になります。
喉閉めは声帯を伸展させる機能(裏声の機能)の不全が引き起こしていることが多いです。
意図した音程に見合った声帯の長さにすることができないと息で解決する方へ走り、たくさんの息に反応して声帯を閉じすぎたり、逆に耐えきれず開いてしまったり、喉頭をあげて空間を狭くして音質を変えなければいけなかったり、悪循環でしかないです。
裏声(声帯の薄いくっつきの状態)を、低音〜高音まで自分が出しうる限りの声域全てにしっかりと行き渡らせてください。
裏声は声帯の接地面積が少なく質量が軽いですから、その状況で軽々と声を扱えないと、多くの方が求めるミックスボイスやベルティングなど地声の要素がのっかった声は到底扱うことはできないでしょう。

もちろん裏声を出すだけで声帯がうまく振動できる柔らかさを取り戻せるわけではありません。
地声ももちろん大切です。筋肉は伸び縮みを繰り返して柔軟になっていきます。

うまく発声できない理由など千差万別で、
●喉頭位置が安定しないせいかもしれないし●地声裏声の機能のバランスが悪い●息が多い●そもそも良い発声の状態の声色のイメージが偏っている、などもう本当に一人一人違います。
「発声」とは、さまざまな筋肉が協力しあって出来上がる複合的で複雑な作業です。
なので、この筋肉がおかしいんだー!!と特定することは非常に難しいです。
解決策があるとしたら、発声に関わることは全てやる!ということになります。
でも私はそれが結果的には一番近道だと思います。

はっきり言って、生まれ持っての自然歌手でない限り、
良い発声の状態を体感したことがある人はほとんどいないでしょう。
私も今になってやっと、声ってこんなに力も必要ないし滑るように出るんだって感じているところです。

ボイストレーニングは今まで感じたことのない感覚を開拓していく作業です。
パズルみたいです。しかも必要なピースが揃っている人はほとんどいません。雑に扱ってきたのでどこかへ紛失してしまいました。
初めは失われたピースを探すところからです。

時間はかかります。本当に。
でもやれば確実に身体は応えてくれます。

一緒に正しい手順で健康的に声を成長させていきましょう!!

 

 

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